草木をつかった編みカゴの作り方を探していて出会った「ここまでわかった!縄文人の植物利用」という本を読みました。
一万年以上前の人たちはどんな植物をどんなふうに使っていたのか?
いろんなことが分かってきています。
「ここまでわかった!縄文人の植物利用」を読んだきっかけ
マクラメ編みが好きな私こと、ゆえです。
最近、山あそびに興味がわいて、草やつるでカゴなど作ってみたい!と思うようになりました。
関連の本を探していたところ、この本を発見。図書館にあったので借りてみることにしました。
縄文時代ですから、今のように鉄やプラスチックなんてない時代ですよね。
加工には、石と手しか使えなかったと思うのですが、当時はどんな植物を使って道具を作り、どんな使い方をしていたのか。
現代の私でも真似して作ることができるのか。
そんな気持ちで読み始めました。
縄文時代について
縄文時代とは、約1万6千年前〜2千5百年前までの、1万3千年以上の期間のことを指します。
一口に縄文時代といってもこれだけの長い期間ですから、草創期〜前期、中期、後期の前半、後期の後半、晩期といったように分けて考えられています。
私が学校の社会科で勉強をした頃には、縄文時代は狩猟・採集生活で、竪穴式の家に住んでいて、稲作など植物の栽培はしていなかったと教わりました。
ですが、1980年代以降に発見された湿地の遺跡の中に、それまでほとんど残っていなかった縄文時代の遺物がきれいな状態で残っていたことから、認識が変わってきています。
縄文人の草木編み
まずは私が一番気になっていた草木編みについてご紹介します。
狩猟・採集が中心の生活であれば、当然集めた食物を入れておくカゴや、持ち運ぶための袋が必要ですよね。
縄文時代の人々は身近な植物を上手に使って、カゴや袋や器を作っていました。
素材
草木編みの素材には多様な植物が使われていました。
居住地の周辺の植生によって使う植物は変わってきますが、以下のようなものが例として紹介されています。
ムクロジ、ツヅラフジ、イヌビワ、テイカカズラ、ヒノキ、アスナロ、マタタビ、ササ、ノリウツギ、トチノキ、ワラビ、タケ
つる植物はそのままか、裂いて使用し、木は割ったり皮を剥いだりして使われていました。
ワラビなどのシダ類は縄の原料になっていたそうです。
作るものや用途によって使う植物を選んでいたんですね。
そのまま使用するには硬かったりちぎれたりすると思うので、編んだり撚ったりする手仕事の技術がすごく高度だったんでしょうね!
編み方
どの植物を使うかによって編み方もいろいろ変えてあります。
実用的な編み方から装飾的な編み方まで、現在でも竹製品や麻などの繊維の編み製品に用いられる編み方のほとんどは、この時代に完成されていたんですって!
今よりずっと身近に植物がある生活ですから、小さな子供でもどの植物がどういう性質をしていて、何に使えるかというのを経験的に知っていたでしょう。
代々日常的にそういう生活をしていたら、そりゃー道具づくりの技術も高度になるよなーと納得。
文明が発達して、便利な道具ができたぶん、手仕事の技術はごく一部の人のものになってしまったのかもしれないなと思いました。
植物の栽培もしていた!
最初にも書いたとおり、私は縄文時代=狩猟・採集の生活だと思ってたのですが、なんと植物を栽培していた形跡が見つかったのです。
栽培されていた植物は、アズキとダイズ。
この2つは、世界中に2万種類以上もある豆類の中でも、日本原産の2種類なんだそうです。
大規模な畑があったとかではないのですが、植物って人間に栽培されると種子が大きくなったり、弾けにくくなったりして、収穫しやすく変わるのだそうです。
そうやって人間に採ってもらって、また子孫を増やしてもらうと。
人間が植物を利用しているようで、植物も人間を利用していた…!
なんか面白いですよね。
美術的な道具も作っていた!
何度もいいますが。
狩猟・採集生活をしていたイメージだと、暮らしが不安定で、道具づくりも実用一辺倒って思ってたんです。勝手な想像なんですが。
でもここもひっくりかえされました!
狩猟で生活している人たちにある、験かつぎ、山の神様にお祈りとかそういうののためと思われる、儀式用の弓とか、普段用ではない漆塗りの器とかが発掘されたのです。
木彫の技術も高く、土器も儀式用に作るものは繊細で美しいものだったので、実用とは使い分けていたことも読み取れるとか。
想像以上にゆとりのある暮らしをしていたんですね。
わからないこと…
科学が発達して、様々な分析方法が確立されたため、わずかな資料からいろいろなことが分かるようになってきています。
この本のもとになった研究は、分野をまたいで複数の専門家が協力して実際に縄文人のやっていたことを再現したり実験したりもしています。
それでも謎はまだまだあるようで。
本を読んでいて特に気になったことがこちらです。
- ウルシはどこからきたのか?
- 外国との交易がおこなわれていたのか?
- 物流があったのか?
北海道では約9千年前のものと思われる漆塗りの繊細な櫛が出土しています。
でも、ウルシの木は日本では自生していなかったとされていて、近くの国で天然ウルシが生えているのは中国なのだそうです。
ところが、同年代の頃の中国の漆器は、それほど繊細で高度なものではなかったようで。
考えられるのは、
- 確認されてないけど日本にウルシが自生していた。
- 中国でまだ見つかっていない高度な漆器の文化があり、かつ日本と交易があった。
そのどちらかだそうですが、この本の研究時点では、どちらの証拠も見つかってないようです。
縄文時代には文字がなかった(あったかもしれないけどまだ見つかってない)ので、残っている物から推測していくしかないんですね。
想像するのは楽しいですが、答えがないってもどかしいー!
まとめ
「ここまでわかった!縄文人の植物利用」には、こんなことが書かれています。
- 縄文時代の人々が食べていた植物。
- 縄文時代の人々が建築に使っていた木。
- 縄文時代の人々がゆるく植生を変えていたこと。
- 縄文時代にすでに高度な植物の加工や木彫が行われていたこと。
- 地域によって利用する植物が違っていたこと。
- まだ謎はいろいろ残っていること。
私は歴史にも地理にもあまり興味がなかったのですが、1万年以上も前にすべての道具を手作業で作ってこんな豊かな生活してたんだなと驚き、ますます興味がわいてきました。
この本には続編の「さらにわかった!縄文人の植物利用」という本がありますので、引き続き読んでみたいと思います!
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。